截金は、切金とも書き、また細金ほそがねと呼ばれた時代もありました。 純金箔やプラチナ箔を数枚焼き合わせ、厚みをもたせたものを鹿皮の盤の上で竹刀にて細く線状、または、丸・三角・四角などに切り、それを筆端につけて貼りながら種々なる文様を描き出す技法で、仏像や仏画の加飾荘厳としてもちいられました。

 六世紀に仏教とともに大陸より伝えられ、最古のものは飛鳥時代の法隆寺金堂の「四天王像」や東大寺戒壇院の「四天王像」、正倉院宝物の「新羅琴」の表面に見ることが出来ます。その後十一世紀頃より浄土教や法華経美術に多用され、わが国独特の截金として典雅、華麗なる仏教美術の華を咲かせました。
 文様も唐草文・つなぎ文・七宝文などの曲線文様なども加わり、十三世紀頃には他の仏教美術とともに頂点を極めますが、次第に仏教美術の凋落、金泥技法の出現などで、截金の手法は衰退し、その名称すら忘れ去られていました。そして近世以降は、東西両本願寺の庇護のもと少数の截金師により伝承されて来ました。

 截金の輝きを今の時代に復興したく願って、日常は仏像に截金を施していますが、限られた方の目に触れるだけで、寺院の仏堂の内陣奥深くに安置されます。まず截金を知っていただくために、身近に用います工芸作品への展開を試み、茶道具、住空間にかかわる筥や屏風、衝立、額装壁面装飾作品等、さらに建築壁面装飾へとその可能性は徐々に拓かれて参りました。しかしその原点は古人が仏荘厳として心を尽くして生み出した技法・技術であることを大切にしています。そしてさらなる展開を求め、現代を表現してゆきたいと願っております。
江里 佐代子拝

Last Update 2019/12/03