京都岡崎に位置する平安佛所は、大佛師の江里宗平と、その子の康慧こうけいと、康慧の妻の截金きりかね師の佐代子を核とする現代の佛所(佛像制作巧房)です。
まず初めに、ご佛像の起源を辿りますと、今から2500年前のインドで、佛陀が誕生されたことへとさかのぼります。
佛陀は人びとに、人生の悩みや苦しみを転じるよう導かれ、生きることの意味を説かれました。真実の法に出遇った歓びは多くの人びとに伝えられ、代々受け継がれました。
佛法は伝えられた土地の風土と溶け合い、その土壌により様々な文化の華を咲かせて参りました。
お佛像は釈尊のご入滅後500年頃、北西インドのガンダーラと中インドのマトゥーラにて誕生します。そして、その後、各地で数多く生み出されるようになり、それぞれが影響し合い、素晴らしい発展を遂げてゆきます。
聖徳太子の時代にわが国へ佛教が伝えられ、人びとのこころの軸となり、副次的には社会平和の秩序となって、長く日本の諸文化の基盤となりました。佛教美術においても世界的に最高水準とされる造形作品が数多く生まれました。その質の高さには、今の時代を生きる私たちの心にまで深く響きかける何かを感じ得ずにはおれません。
それは古来より、人々が真実の法に遇いたいという願い、遇った歓び、遇った感謝の気持ちと報恩の心から生まれてきたのだと思います。佛を供養し讃嘆するこころは荘厳を生み、佛国土の建設を願う気持ちにより具現化されたのではないでしょうか。
かつて日本ではほとんどが木による寺院の建立、お佛像の造立が為されました。盛時には大寺院に官営の造佛所が設置され、佛師、番匠(木地師)、截金師、彩色師、塗師、箔捺し師を始め、多くの人たちが技を磨き、それを弟子達に伝承して参りました。
拙巧房、平安佛所は古典の佛像、荘厳具、工芸品に見られる、その創造性溢れる崇高な仏教美術の再現を願い、そして往古の人びとのこころに少しでも近づくことを目標に致しております。